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東京高等裁判所 昭和24年(新を)3525号 判決

被告人

山口惣次郎

主文

原判決を破棄する。

本件を東京地方裁判所に差戻す。

理由

弁護人遊田多聞の控訴趣意第二点について。

原審においてその第一回公判の際弁護人から谷中ナツ及び山口キクの両名を証人として尋問請求あつたに対し、原審は採否を留保し、更に同第三回及び第四回公判のとき公判手続を更新し、その都度弁護人から右証人両名の尋問請求を繰返したのに原審は依然留保を続け、その後第五回公判に至つて留保のまま弁論を終結して、その次回に判決の宣告に及んだことは右各公判調書の記載によつて明瞭である。(但し第一回公判調書中谷島マツとあるは谷島ナツと同一人にして、ナツの誤記なりと認める)。而して斯ように証拠調の請求ある場合には、裁判所は遅くも弁論の終局前に必ずその請求採否の証拠決定を明示して、之に対する請求者の態度決定の機会を与えるべきは当然であり、之に反し決定を留保したまま結審して判決を言渡すは即ち訴訟手続違背であつて、而もその事項の性質上判決に影響を及ぼすこと明らかなりといわなければならない。故に原判決はこの点において所論のような違法あり、破棄を免れ難く論旨は理由がある。

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